第25回日本病院総合診療医学会学術総会

会長挨拶

第25回日本病院総合診療医学会学術総会 会長
渋谷 俊介
岩手県立胆沢病院 総合診療科長兼内視鏡外科長


 このたび「第25回日本病院総合診療医学会学術総会」を2022年8月19日(金)、20日(土)の両日にわたり開催させていただくこととなりましたので、謹んでここにご挨拶申し上げます。
 いよいよ2022年4月から病院総合診療専門医制度が開始されることになりました。病院総合診療医は、あらゆる症候・疾患に対する最新の医学知識に基づいた思考力と行動力、そしてコミュニケーション能力や組織管理力、さらに最近は地域包括ケアの概念に代表されるように地域と密接に関わる医療を展開する総合力が求められるようになっています。そこで本制度は次世代の病院総合診療医の育成のために周到に準備され構築されています。
 また、総合診療専門医のサブスペシャルティーとしてだけではなく、他のすべての基本領域の専門医や旧制度の専門医、さらには本学会認定医にも開かれた制度となっています。過去には類を見ない画期的な専門医制度といっていいでしょう。今こそ!病院総合診療医の充実をはかるのに非常に良いタイミングではないかと考えられますので、メインテーマを『今こそ!病院総合診療』とさせていただきました。
 社会の高齢化を背景に、様々な疾患を持ち、多くの社会的問題を抱えている患者さんが増加の一途をたどってきています。このような患者さんに対応していくためには多職種の連携が不可欠であり、多職種チームをうまく機能させるためにはコンダクターとなりうる医師の存在が重要となります。様々な規模で急性期から慢性期までの病院医療チームにおいてリーダーシップ、マネジメントスキルを発揮し、患者および患者家族の人生における病院ケアでの健康管理を最大化することのできる病院総合診療医は、この役割を担う医師として期待されています。 未曾有の高齢化が進行する日本社会ですが、2030年には人口のおよそ1/3が高齢者になると予想されています。この難局に対応するためには、病院総合診療医をさらに充実させていかなくてはなりません。
 これから育成が進む病院総合診療専門医だけでは、対応は不十分と考えられます。今まで、別の領域でがんばってこられたベテランの先生方にもぜひ病院総合診療医へのキャリアチェンジを御検討いただければと思います。It's never too late to start! 現在、私自身も25年間やってきた外科医から、病院総合診療医へとキャリアを転換中です。
 岩手県奥州市出身の政治家であり医師でもあった後藤新平は、『一に人、二に人、三に人』という名言を残しております。この世を作っていくのは人であり、世の中をよりよくするためには、人を育てるということが一番重要であるということを示しております。
 今回の学術総会では、病院総合診療医を育てていくために、幅広い分野での教育講演を充実するとともに、災害医療や病院マネジメントなど過去の学術総会であまりとりあげられていなかった分野にも目を向けた構成でプログラムを作成していきたいと思っております。