第23回日本術中画像情報学会

会長挨拶

会長

第23回日本術中画像情報学会 会長
藤井 正純
福島県立医科大学 医学部
脳神経外科学講座主任教授




 このたび、第23回日本術中画像情報学会を主催させていただくにあたり一言ご挨拶を申し上げます。開催にあたり、学会のテーマを、「手術の品質保証-Quality Assurance(QA) of Surgery」とさせていただきました。QA of Surgeryとは、手術の目的を明確にした上で、術前の計画と目標の立案、術中の手術遂行・目標達成管理と安全性の確認、術後の課題検証を通して、手術を客観的に評価することでその質を向上し、治療成績と患者のQOLの向上を目指す体系的な取り組みです。本学会を通じて、術中画像情報が果す役割や限界ついて、現在の、極めて具体的な現場の情報から、改善や工夫、さらには基礎的研究や近未来の姿に至るまで皆様と情報共有できれば幸いです。
 本学会の歴史は、手術中の画像支援技術を中核的なテーマとして、術中MRI・CT・超音波診断装置・蛍光診断・血管撮影など各種の画像診断モダリティーと、こうした画像を用いたナビゲーション・シミュレーション技術に焦点をあて、さらにこれにとどまらず、術中に可視化可能な機能モニタリング技術をも含め、安全で確実な手術の実現に向けた手術支援技術の発展に取り組んできた歴史といえます。特筆すべき本学会の特徴は、脳神経外科医が大きく関わる一方で、診療科・医療職種の別を超えた連携、医工学連携、産学連携の場としても重要な役割を果たして参りました。
 ここで「術中画像情報」の役割とは何でしょうか。突き詰めると、これらは「手術の質の保証」のためにあると言えます。すでに一般社会で工業製品やサービスの分野に広く導入されている品質管理・品質保証活動は、製品・サービスの製造・提供の過程を客観的に評価して、標準化、体系化して品質を高める活動といえます。ここで一般に、「品質管理」が、特に製造・サービスの現場に限定した、主として作り手側の取り組みであるのに対して、「品質保証」は、企画前から販売後まで、顧客側の視点で行われる活動とされます。QA of Surgeryは、患者側と医療者側の両方の視点、すなわち「品質管理」を包含した広い意味での「手術の質の保証」を意図しています。すなわち、これまで、その複雑性・多様性ゆえに主に主治医の経験と判断(=アート)に頼ってきた、手術の質の保証を、術中画像情報というテクノロジーを利用して、サイエンスとして、また手術に関わる多くのスタッフが力を合わせて実現する世界を夢見ています。学会では、近年発展著しいAIや、その他の新しい技術、本学会が主導してガイドラインを作成した術中MRIを取り上げながら、さまざまなアイデアを取り入れたいと考えております。どうぞ皆様のご協力をお願いいたします。